創刊の辞*1

 『科学技術コミュニケーション』(Japanese Journal of Science Communication)は,日本初の,科学技術コミュニケーションに特化したジャーナルです.科学技術コミュニケーションに関する論文や,報告,紹介記事などを掲載し,年2回,3月と9月に刊行します.この分野に関心をお持ちの方,皆さんに開かれたジャーナルです.

 

 CoSTEPは今年の3月で,1期生2期生をあわせ100名近い受講生を世に送り出すことになります.彼/彼女らは今後,様々な場所で科学技術コミュニケーターとして活躍してくれることでしょう.すでに目覚ましい活躍をしている1期生もいます.

 科学技術コミュニケーションにおいては,実践活動を行なうこともさることながら,活動の内容や成果についてきちんと文書にまとめ社会に発信していくことも大切です.活動を報告にまとめることで,社会への発進力が増します.あとにつづく人たちに有益な手がかりを提供することにもなります.他の人からの評価を受けやすくなり,自らが飛躍するための糧を得ることにもつながります.

 同じことは,CoSTEPの活動自体についても言うことができます.CoSTEPは教育活動の一環として,サイエンス・カフェの開催,ラジオ番組の制作,ウエブ・コンテンツの制作,地域にある科学技術コミュニケーション上の問題の解決に取り組むプロジェクト活動など,様々な科学技術コミュニケーション活動に取り組み,成果を挙げてきました.これらの成果を広く社会に発信し,他の人たちからの評価を受け,CoSTEPの活動の改善につなげていくことが大切です.

 こう考えると,「科学技術コミュニケーターを養成する」というCoSTEPのミッションは,「授業」の中だけで完結するものではなく,広く社会と交流する必要があるということになります.本ジャーナルは,そうした交流の場の一つになればという思いから創刊しました.

 

 他方,科学技術コミュニケーションに取り組んでいるのは,CoSTEPだけではありません.大学や科学館,企業,あるいはジャーナリストの方などが様々な活動を展開しているのはもちろんですが,日本の各地でNPOや教員のグループなど地道な活動をくり広げる方々も少なくありません.ところが,そうした活動の成果が,一望できるようには蓄積されていません.そのため,同じような失敗/成功の体験があちこちで繰り返されているように思われます.外からの評価をうけつつ累積的に発展していく,という体制ができていないのです.

 こうした現状に一石を投じたい,というのも本ジャーナルを創刊した理由の一つです.CoSTEPや,CoSTEPの修了生・受講生の活動を誌面に発表しますので,読者の皆さんにぜひ参考にしていただきたい.逆に本ジャーナルの紙面を飾った皆さんの論文や報告から,CoSTEPも大いに学ばせていただきたいと思っています.

 

 以上のような思いから,本ジャーナルはCoSTEPが編集・発行するものではありますが,科学技術コミュニケーションに関心をお持ちの方ならどなたでも投稿できるものとしました.また,どこにお住まいの方でも,いつでも本誌を読めるよう,オンライン・ジャーナルを基本としました.http:// eprints.lib.hokudai.ac.jp/ で,無料でご覧になれます.

 さらに,科学技術コミュニケーションの多様な側面をできるだけ誌面に反映しようとの思いからアドバイザーの制度を設け,CoSTEP外の方々をお迎えしています.

 

 本誌が,多くの方々からのご支援をえて力強く発展していくことを願っています.

 

2007年3月1日
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)*2
代 表 杉山 滋郎

*1 『科学技術コミュニケーション』 第1号,pp.1-2 より転載
*2 科学技術コミュニケーター養成ユニット(2005年7月~2010年3月)の活動は,2010年度からは,北海道大学高等教育機能開発総合センターに設置された科学技術コミュニケーション教育研究部において継続されています.