科学技術コミュニケーターって?
「科学技術コミュニケーター」の役割と必要性,CoSTEPが育成していきたい人材について,CoSTEP代表・杉山が語ります。
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■なぜ,科学技術の分野だけに,こうしたコミュニケーター養成のシステムができたのですか?
「仲立ち」をする人は,科学技術の分野だけに必要なわけではありません。
しかし,殊(こと)に科学技術の分野では,一般市民に「理解できるわけがない」,だから「口を出す筋のものではない」という風潮が強く,市民が自分たちの考えを伝える術(すべ)がなかったように思います。科学技術が関係する政策の決定などに,参加する途(みち)がなかったのです。
でも,それでいいのでしょうか。たとえば,遺伝子操作の技術をどのように使っていくかなどについて,市民は声を出すことができるはずです。がんになった患者さんや家族は,医学の専門家ではないけれど,どのように治療してほしいか選ぶことができるのと同じではないでしょうか。
研究者は,市民に対して丁寧に語りかける必要があるし,市民の声に耳を傾けることも必要です。社会からの信頼と支援があってこそ,科学技術は社会に定着していくのです。また市民には,そうした議論に参加する権利と義務があると思います。
そういうときに,科学技術コミュニケーターが市民と科学者の間をつなぎ,社会的に有益なコンセンサスをつくるお手伝いができればよいと思います。コーステップも,そのための人材を育てていきたいと思います。
■コーステップの特徴を教えて下さい。
大きくいうと3つの特徴があります。1つは「双方向・参加型」であること,2つめに「地域密着」,3つめは「実践重視」です。
「双方向・参加型」は,サイエンス・カフェが一つのよい例です。これは,市民のみなさんが参加して,一緒に考えていきましょう,というスタイルのものです。大学で開かれる公開講座などは,テーマや発表者が大学側の考えで決まったりしますが,サイエンス・カフェの場合は,何よりもまず市民のニーズに合わせたテーマがあり,人選があって,初めて成功するのです。
そして,一方的な講演ではなく,専門家と市民とが,そして市民どうしも,膝をつき合わせて対話する,ということを大事にします。
「地域密着」には2つの意味があります。1つは,この地域――ここでは北海道に固有の問題,生活に密接に関わる問題を積極的に採り上げていこう,ということです。2つめには,地元にいる方々とさまざまな形で連携しながら活動していこう,という意味があります。
現在も,札幌のコミュニティFMのみなさんの協力でラジオ番組の放送を行なっていますし,これからも,地元で活動されている様々な方々と連携して,科学技術コミュニケーションのうねりを創り出していきたいと考えています。
そして「実践重視」は,実際のコミュニケーション活動(サイエンス・カフェや,ラジオ番組制作,ウェブ制作,ライティングなど)を通して,必要なスキルを身につけていくということです。そのためにコーステップでは,各方面で実務経験が豊富なスタッフを集め,力を合わせて受講生の指導にあたっています。
■これから育てていきたい人材は?
いろいろな職場や地域で,自分の立場や問題意識を活かして活躍する,そんな人材を育てたいと考えています。科学技術コミュニケーターは,国家試験があるわけでもなく,職業として確立しているわけでもありません。だから,コーステップを修了したからといって,それだけですぐに,科学技術コミュニケーターとしての活躍の場が保障されるというものではありません。
受講生には,30代,40代の方もたくさんいらっしゃいますが,今やっている仕事や地域の活動のなかで,コミュニケーターとしての役割をはたしてほしいと思います。また,実践の場,活動の場を,みずから切り拓いてほしいとも思います。
■これから科学技術コミュニケーターをめざす人に,一言メッセージをお願いします。
サイエンス・カフェ札幌の会場
毎月1回,札幌駅近くの書店で開催している「サイエンス・カフェ札幌」。毎回,多数の市民が参加するイベントとして定着してきた。
私がよく言うのは,「常に弱い人の立場に立って,弱い人に寄り添うことを忘れないように」ということです。科学技術の問題をめぐって専門家と市民との「仲立ち」をするというとき,コミュニケーターは市民と同じ目線に立って,市民の不安や痛みがわかるようでなければ,社会的なコンセンサスを形成していくのを手助けするという,本来の役割を果たすことはできないと思います。
その意味では,「理科嫌い」の人が科学技術コミュニケーターになると,とてもいいかもしれません。理科好き,科学好きの人がたくさん集まって盛り上がっても,視野は狭くなりがちです。理科の知識がなくて,大嫌い!と思っている人も,ぜひなってくれるといいですね。
(2006年3月29日 杉山研究室にて)