科学技術コミュニケーターって?
「科学技術コミュニケーター」の役割と必要性,CoSTEPが育成していきたい人材について,CoSTEP代表・杉山が語ります。
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北大大学院理学院 教授 杉山滋郎 インタビュー
■「科学技術コミュニケーター」とは,何をする人ですか?
「科学技術コミュニケーター」という職業や,そういう肩書きがあるわけではありません。それでは実際にどんなことをするのか,具体例をあげてみましょう。
●科学技術の研究グループの一員として,自分たちの研究成果や研究の意義を,わかりやすく魅力的な広報誌やウェブ・ページを作って発信する。
●メディアの記者やフリージャーナリストとして科学技術に関する情報をわかりやすく伝える一方,一般市民が持つ科学への疑念や不安を科学者集団にフィードバックする。
●科学館や博物館,植物園,動物園などで,新しい企画や展示を提案する。あるいは解説員(インタープリター)として活躍する。
●地域の子どもやその親たち,あるいはお年寄りたちに,学校や公民館などを活用して,それぞれが興味を持つような科学技術に関するイベントを行う。
●喫茶店や書店などで,専門家と市民が気軽に科学技術について語り合う「サイエンス・カフェ」など,人々が科学技術とふれ合うことのできる機会を創り出していく。
●NPOやNGOの一員として,科学技術をめぐるさまざまな問題に取り組む。
●食の安全や健康・医療,環境問題など,科学技術に関係した身近な問題に関心を寄せる人たちと協力して,“ともに学ぶ場”を創り出していく。
●社会的な合意が求められている科学技術上の問題について,市民が参加するコンセンサス会議などで合意に到るよう,専門家と市民との相互理解を深めていくことに貢献する。
つまり「科学技術コミュニケーター」とは,「いろいろな場や機会を通じ,さまざまなアプローチで,科学技術に関するコミュニケーションを促進していく活動に関わる人」すべてのことなのです。
杉山滋郎(すぎやま・しげお)
杉山滋郎(すぎやま・しげお)
科学史・科学コミュニケーション・科学技術社会論 研究室
教授 博士(学術) 1950年生まれ
ここ10年あまり,19世紀半ば以降の日本の科学史を中心に研究してきましたが,最近は,科学技術社会論の領域(とくに Public Understanding of Science や 科学コミュニケーション にかかわる諸問題)についても関心をもって研究しています。
>>詳しくは
「科学史研究室」のウェブサイトをご覧ください。
■科学技術コミュニケーターの役割は?
まず第一に,科学技術の専門的な内容や,それを研究したり開発したりすることの意義などを,一般の人々によくわかるように伝えることです。また,研究すること,学ぶことの楽しさを伝えることも大切な役割です。
同時に――こちらは忘れられがちですが,一般の人たち=市民が,科学技術で不安に思っていること,研究してほしいと思っていることなどを,専門家の側に伝えること。
たとえば,最近,生命についての研究がどんどん進んで,「遺伝子操作」という言葉をよく耳にしますが,「それでいいの?」と不安を感じる人も少なくないでしょう。市民のそうした意見,どうしてそう考えるのかなどを,研究者たちにしっかり伝えていくことが大事です。
こうした二つの面で,研究者と市民との「仲立ち」をすること,それが科学技術コミュニケーターの役割です。
科学技術コミュニケーターは,他の仕事でたとえると,医者と患者の間に立って,お互いをつないでくれる看護師や,法律問題で困ったときに相談にのってくれる弁護士にあたると思います。
■杉山先生は,もともと科学史がご専門ですが,今回どうして科学技術コミュニケーターの教育に取り組まれることになったのですか?
科学史には大きく分けて二つのアプローチがあって,一つは,科学理論が実験の結果などをもとに作り上げられていくプロセスを解明するもの。もう一つは,科学が社会に与えたインパクトや,社会にどう受け入れられたかなど,科学と社会の間で起きる現象について研究するものです。私は後者に興味がありました。つまり,科学史研究者として,科学技術をめぐるコミュニケーションの問題にはずっと関心があったのです。
たとえば,2005年に『北の科学者群像』という本を書きましたが,これは戦後まもなく,北大の科学者たちが中心になって,自分たちの研究を一般の人に伝えるために作った『理学モノグラフ』というシリーズ本を読み解いたものです。昔の科学者たちは,研究のなかみや研究への思いを,非常にわかりやすく伝えています。アウトリーチ活動をきちんとやっていたのです。
昔の大学の先生は,時間もあっていろいろ余裕があったんですね。ピアノが上手いとか絵がプロ級とか,趣味人も多い。それに比べると,今の先生は忙しくてそんなヒマがないのかもしれません。
でも,研究者たちはみな,自分で楽しいと思って研究しているわけで,その楽しさを他の人たちにも伝えたいという気持ちはあります。また,何をめざして研究しているのかも,知ってもらいたいと思っています。そうした研究者のお手伝いをする,それも科学技術コミュニケーターの仕事だと思います。